フレイルとは?
山下裕玄医師
フレイルという言葉をご存知でしょうか?これはもともとfrailtyという単語に由来していますが、“弱い”“脆い”といった意味合いで日本語訳すると“虚弱”に相当しますでしょうか。
人は年齢を重ねるにつれて様々な臓器機能が低下してきます。心臓、腎臓を含めて全ての臓器は産まれてからずっと休みなく働き続けている訳ですから当然と言えば当然なのかもしれません。機能に問題が出た場合にはメンテナンス(治療)をして機能回復をはかります。加齢に伴って臓器以外に筋力も低下してくることは容易に想像ができます。高齢の方は軒並み歩行速度が遅く、ゆっくり杖を使いながら歩くこともあるでしょう。歩行能力の低下した方は転倒するリスクも高く、実際に転倒すると骨折することもあるでしょう。そうなりますとさらに移動能力が低下します。筋肉は使わなければどんどん減っていきますし筋力が落ちていきます。活動能力の低下→栄養が不足しても何とか維持できる→栄養不足のために貯蓄脂肪だけでなく筋肉までエネルギー源に変換される→さらに筋力が減る→活動能力の低下→以後おなじサイクルの繰り返し。こういった悪循環(フレイルサイクルといいます)によってどんどん活動性が低下していくことが考えられます。
いわゆる“寝たきり”になって要介護状態になっていくのがこういった悪循環の結果であるならば、この悪循環を断ち切ることこそが大切であると考えることができます。筋肉量・筋力の維持と同時に栄養をとることも大切であることは間違いありません。また、運動によって免疫系が活性化することも知られています。風邪は万病の元とはよく言われたものですが、運動不足・栄養不足もまた万病の元と言えるのではないでしょうか。適度な運動と食事、やはりこれが大切なんだろうと感じます。フレイルという言葉自体は特に高齢者を意識したものですが、上記のようなコンセプト自体は若い世代にも通じるような気が致します。
山下裕玄医師