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ドクターズコラム

「大腸内視鏡検査前の下剤を胃カメラで投与することについて」 
阿保義久 院長

大腸内視鏡検査は大腸がんの早期発見に極めて有用な検査ですが、前がん状態であるポリープ(線腫)を検査内で治療(切除)することができるため、大腸がんの発症予防という点でも非常に有効であると言えます。定期的に大腸内視鏡検査を受けて、ポリープがあったら全て切除すれば、大腸を常にクリーンに保つことができます。大腸にポリープなどの病変がない状態(クリーンコロン)は大腸がんの発症を予防することが証明されています。  大腸内視鏡検査を定期的に励行していれば大腸がんを撲滅できる可能性があるわけですが、検査前に必要な下剤を2lも飲めないという理由で検査を受けられない方もしばしば見受けられます。どうしても下剤が飲めない方に 上部内視鏡(胃カメラ)を用いて下剤を投与する方法もありますが、この手法は安全面で注意が必要です。

まず、高齢者の方はもともと内視鏡前の下剤(ニフレック)を投与すること自体に注意が必要で、内視鏡下での投与には適しません。下剤を急激に腸管に流し込むことにより腸閉塞のリスクが高まるからです。10~15分間隔で約180mlの下剤を飲むのが一般的ですが、これにより2時間くらいかけてゆっくり下剤を腸管に送り込み腸閉塞の危険を回避しているのです。胃カメラで一気に大量の下剤を投与するのは高齢者には危険です。 また、腹部手術後の方や便秘傾向があり、便秘薬を常用している方、進行がんを疑う方も、腸閉塞を誘発する可能性があるため、胃カメラによる下剤の投与は適しません(これらの患者さんには、事前にX線にて腸管ガスの状況を確認することが望まれます)。 そして、下剤投与により稀にアナフィラキシーショックを起こすことがあるので、以前、同じ下剤を使用して問題がなかったことを確認しておく必要があります  さらに通常の下剤使用においても気分不快、吐き気が見られることがあり、飲み始めの2~3杯はコップ1杯(約180ml)を15分以上かけてゆっくり飲むようにと添付文書に記載があることから、 下剤2l全てを一気に内視鏡下で投与することで有害事象が発生するリスクが大きくなると感じます。

そこで、胃カメラで下剤を投与する際には、1リットル程度の投与にとどめ、残りの1リットルは、内視鏡検査後、自身で内服頂くのが良いでしょう。胃内にニフレックを投与する場合は、誤嚥を来さないよう注意する必要もあります。胃カメラを用いて大腸内視鏡検査用の下剤を投与することは相応の危険を伴うので、このように慎重に管理すべきでしょう。  また、最近は液体に比べて服用しやすい錠剤の前処置薬も使えるようになりました。これは1回5錠の薬剤を200mlの水と一緒に15分毎に計10回飲むというやり方です。結果としてこれも2lほど水を飲むことになりますが液体の下剤に比べて非常に飲みやすくなっています。ただ、便秘がちの方は、この錠剤だとやや洗腸効果が弱いので、検査1週間くらい前から便を柔らかくする薬も併用してもらうなどの工夫が必要です。

阿保義久 院長

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